理事長挨拶

理事長挨拶

社会福祉法人新市福祉会
設立28年周年と地域共生社会への展望

社会福祉法人新市福祉会は、地域の高齢化と国の高齢者保健福祉政策推進を背景にした地域住民の強い要望を受けて、14名の発起人により平成6年(1994)10月、創設されました。その時の行政代表者は、藤原 平 新市町長です。今年で28周年を迎えました。平成6年といえば、まさに介護保険制度創設前夜(6年後の平成12年、2000年に法制化)で、国は市町村における特別養護老人ホームなどの施設の緊急整備、ホームヘルパーの養成などによる在宅福祉の推進などを柱とする高齢者福祉対策を進めておりました。

このような時代背景のもとに、当法人が取り組んだ事業は、介護老人福祉施設(旧称特別養護老人ホーム)「ジョイトピアおおさ」-平成8年(1996)1月-と、介護老人保健施設「ジョイトピアしんいち」-平成10年(1998)8月-でした。

社会福祉法人新市福祉会
理事長 寺岡 暉

当初から、高齢者介護福祉サービスは細切れではなく医療との連携のもとに一体的に提供されることが必要であると考えており、その意味において、医療法人(平成21年、2009年に社会医療法人)陽正会寺岡記念病院との連携を基盤とする取組が不可欠であると考えました。このことを基本コンセプトとして、両施設の名称に「高齢者総合福祉施設」を冠したのです。

ジョイトピアおおさでは、特別養護老人ホーム、ケアハウス、短期入所生活介護、通所介護、居宅介護支援事業所、老人介護支援センター、地域包括支援センター(福山市からの委託事業)の7つの事業を展開し、地域文化づくりを心掛けています。初代の施設長は、若林 誠二さんでした(令和元年逝去)。

ジョイトピアしんいちにおいては、医学管理・看護のもとに介護及び機能訓練並びに日常生活上のお世話を行い、それぞれの利用者に応じた自立を支援しています。このようにして、医療と介護・福祉の包括的ケアを推進して来たのです。言い換えれば、医療施設と介護・福祉施設が連携して医療・介護・福祉を包括した全人的トータル&シームレスケア(継ぎ目のない、一体的な包括ケア)を推進してきたのです。

一方、国(厚生労働省)は、制度・分野ごとの『縦割り』の関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我がこと』として参画し、『丸ごと』つながることで地域を共に創っていく社会を「地域共生社会」と称しています。われわれが推進してきた包括ケアは、この「地域共生社会」にもつながっているのです。

このようにして、高齢者総合福祉施設ジョイトピアと寺岡記念病院は連携して医療・介護・福祉を包括した全人的トータル&シームレスケアを推進して来たのです。その後、時代は下って、「医療介護総合確保推進法」が平成26年(2014)年6月に公布され、順次施行されることになりました。

その趣旨は、「地域包括ケアシステム」を構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進する、と云うもので、われわれがこれまで取り組んできた方向と一致するものでした。

そこで高齢者医療に改良を加えながら(「スロウ・メディシン」)、医療と介護という地域の共有資源を地域空間と多世代交流の中に組織化していく事業として「ローカル・コモンズしんいち」を構想し、平成26年(2014)年4月「多世代交流施設 ローカル・コモンズしんいち」が誕生したのです。

この事業は、社会福祉法人新市福祉会と社会医療法人陽正会とが取り組むこととし、従来型の介護保険事業と地域医療とを融合して、高齢者の虚弱対策の視点から高齢者および高齢予備軍の健康増進と生活の質向上を志向し、さらに地域社会の地域づくりを目指した包括的な事業です。

「医療支援のない介護はあり得ない、介護のない高齢者医療は成立しない」が事業全体の基本ポリシーです。この施設は、サービス付き高齢者住宅、認知症デイサービス、障害者就労支援、レストラン、図書室、ガーデン・畑など多彩・多様な空間から成っており、多世代交流施設でもあります。これからの時代は医療・介護・生活を包括したサービスが地域活動・地域づくりに繋がっていく地域包括ケア空間が地域で共有される時代が来ると信じています。